マンション大規模修繕日記

マンション大規模修繕業務に係わる日記です。

そもそもなぜ、分譲マンションには大規模修繕工事が必要か?

分譲マンションに大規模修繕工事が必要なのですが、その理由を正しくご理解いただけていない方も少なくありません。

組合の方に伺うと

屋上防水の保証期間が過ぎたから

塗装がよごれてきたから

タイルがひび割れてきたから

どの答えも間違いではありませんが、根本的な理由ではありません。

究極の答えは、コンクリートと鉄筋を守る為です。

分譲マンションは鉄筋コンクリート造か鉄骨鉄筋コンクリート造です。

いずれも柱、梁、床といった建物を構成する多くの部分は鉄筋コンクリートでできています。

鉄筋コンクリートは鉄筋とコンクリートという二つの材料で出来ています。

二つの材料が一体となって建物を支え、建物に掛かる重さや地震等の外から掛かる力に対抗しています。

それぞれの役割は、鉄筋が建物に掛かる引っ張る力に対抗しコンクリートが建物に掛かる圧縮力に対抗します。

特に問題となるのが、鉄筋です。

鉄筋は空気中では非常にさびやすく、錆びると体積が約8倍となり、引っ張る力を負担しなくなります。

そのため、鉄筋の周りを強アルカリ性であるコンクリートで覆い、鉄筋がさびないようにします。

錆びるということは、酸素と結びつくこと、つまり酸化ですから強アルカリ性のコンクリートで鉄筋を覆います。

鉄筋とコンクリートが健全であれば、鉄筋コンクリートの建物は、100年以上持つと言われています。

そのために、鉄筋コンクリートの表面に塗装等の仕上げ材というなの保護材を塗って鉄筋コンクリートを守っています。

建物の中には、「コンクリート打ち放し」と言って何の仕上げもされていない建物もありますが、こうした建物は、仕上げがある建物よりもコンクリートを厚くして鉄筋を守っています。

しかしながら、鉄筋コンクリートの建物にもいくつかの弱点があります。(つづく)

前回の大規模修繕工事からたった10年で・・・その2

管理組合の皆様にお尋ねします。

外部に目立った劣化が無いのに弊社以外の設計事務所等の調査会社に建物調査診断を頼んだとすると、「劣化が少ないので工事はまだまだ先で大丈夫ですよ」という管理組合にお優しい調査診断結果が出ると思いますか?

そのような調査結果を出せる設計事務所はごくごく少数だと思います。

そもそも、工事をする側にとって、12年ごとの工事ではなく15年保つ仕様で工事を行うこと自体が、大規模修繕工事の総件数を減らすと考えている関係者(設計事務所、施工会社、メーカー、工事を行う管理会社)が多数派を占めています。

15年周期で大規模修繕工事を計画することは、結果として「自分で自分の首を絞めかねないバカモノのすること」と陰では言われ、未だに批判されています。

「修繕周期15年を目指し、実行している派 実行できる派」はマンション大規模修繕工事の業界では、まだまだ多数派ではなく、少数派です。

このように工事優先で工事の周期を伸ばすことに必然性を感じない人達というか12年の修繕周期で次の大規模修繕工事をやりたい人達にとって、前回の大規模修繕工事から10年程度で次の建物調査診断をするということは、12年目での大規模修繕工事へのレールを敷けることになります。

なぜなら、マンション大規模修繕の専門家がいる管理組合はほとんどありません。

そのために多くの管理組合では、専門家に建物調査診断、設計監理、施工会社選定コンサルを委託しています。

その専門家が建物が劣化していますと言えば、そのような判断になります。

どのような大規模修繕工事をしても年数がたてば、それなりの「経年劣化」は生じます。

その劣化が「もう工事をしなくてはならない程の重篤な劣化」なのか「まだしばらく工事をしなくても良い経年劣化なのか」専門家ではない限り判断が難しいところです。

弊社が見れば、まだ工事をしなくても良い劣化状況であってもなぜかあれよあれよという間に「専門家の判断では、建物の劣化が進んでいるので、一般的にも前回から12年で大規模修繕工事をしなくてはならない」ということになりかねませんので、ご注意ください。

前回の大規模修繕工事からたった10年で、また調査診断を行うの?

弊社では、18年以上前から次回の大規模修繕工事を15年後に行えるような仕様で設計し、工事監理をしております。

ところが、最近前回の大規模修繕工事から10年から11年で前回大規模修繕を行った管理組合様から調査診断の見積の依頼が何件か続いております。

15年周期での大規模修繕工事であれば、前回の工事から12〜13年目での調査診断で間に合うはずにも関わらず。

「そんなバカな・・何か大きな問題があったのか?」ととりあえず建物の現状を確認しに行くと、いずれも大規模修繕工事を急がなくてはならない深刻な劣化はありませんでした。

1件は「今の積立金のままで、将来積立金が足りるかどうか不安になった。長期修繕計画の見直しをしたいとある人に相談したら、まず建物調査が必要と言われた」

もう1件は「屋上防水の一部に水が入っている」というもので、確認に伺うと確かに水は入っていましたが、水抜きの補修で対応ができる問題でした。

その際に「前回の大規模修繕工事から10年過ぎているね。」となったそうです。

どちらも「大規模修繕工事は一般的に12年周期で行うものなので、前回の大規模修繕工事から10年経ったので、そろそろ建物調査が必要」と理事のどなたかがどこかで聞いてきたのが発端のようです。(つづく)

2027年に大規模修繕工事を考えている組合様へ

前回の大規模修繕工事に比べ、施工会社選定のタイミングが大幅に前倒しとなっておりますので、お気をつけください。

只今2025年5月の上旬ですが、今年2025年の秋工事の施工会社選定はどの施工会社も終了しているかと思います。

弊社の例で言いますと2025年工事の選定(施工会社ヒヤリング)が終了したのは、2024年11月上旬です。

現在公募を行い、見積を徴収している物件は、2026年(来年)の春又は秋工事です。

これが10年前であれば、その年の秋工事の施工会社選定を連休頃に行っていました。

マンション大規模修繕工事を行う施工会社が減ったため(只今、ゼネコンは、ほぼマンション大規模修繕工事を行っていません)年々施工会社の選定が早まっていき、今では工事前年の出来るだけ早いタイミングで(3月以降)に公募をかけ、見積を依頼する様な流れになっています。

ゼネコンの撤退により、マンション大規模修繕工事を行いたい管理組合の数に比べ、施工会社ができる工事量の方が少なくなっている感じです。

そのため、秋の終わりに翌年の大規模修繕工事の施工会社の公募を掛けても、施工会社が集まらないケースも見受けられます。工事を行いたい管理組合の積み残しというような状況です。

そのような積み残しに合わないためには、どんなに遅くとも見積を依頼する前年の秋までに建物調査を終え、翌年の春に公募を掛け、夏の終わりまでに見積を依頼せねばなりません。

もしも、2027年に工事を予定しているなら、次のようなスケジュールになるかと思います。

2026年春に施工会社の公募を掛け、見積を依頼する。

そのためには、2025年の秋には、設計事務所が調査診断を終える必要があります。

そうすれば、2025年冬から2026年の春までに設計事務所がに修繕設計を進められます。

2025年の秋の調査は11月上旬が限度で、10月には設計事務所との契約を行う必要があります。

9月末までに組合で総会を開き設計事務所と契約する準備を整える。

総会の準備のために8月末には設計事務所の選定を終える。

このようなスケジュールとなります。

せっかく夏の終わりに設計事務所を選定しても11月末の定期総会まで待って設計事務所との契約を決め12月に調査診断をお願いしたいという管理組合がたまにあります。

札幌はその年の降雪が早ければ、12月になると、屋上・外構・バルコニーが積雪で調査できなくなります。

そのため、遅くとも11月上旬までに調建物査を行う必要があります。

設計事務所の調査員は12月の真冬の低温の吹雪の中でも調査ができると考えているなら、それはちょっと問題がありますが・・・

裏ワザとして、年内、年初に設計事務所と契約をして、設計を先行し春4月に調査を行い早々に公募を行う方法もあります。

ただし、2026年初頭に設計事務所と契約をしないと、この方法は使えません。

契約はできないが、仕事は進めてほしいというのは・・・無理です。

年3回やって来るスケジュールの難所

長年マンション大規模修繕に携わっておりますと、年に3回訪れるスケジュール上の難所をどのように乗り切るかが心配ごとになっています。

そのスケジュール上の難所とは、連休が続く年末年始、お盆、そしてゴールデンウイークです。

この期間はほほすべての国民にとっては大型連休ですので、ここに打合せを入れると非常識と非難されかねませんので、管理組合との打ち合わせは出来なくなります。

連休のどこがスケジュールの難所かと言えば、打合せができない連休期間の反動として、その前後の週に打合せが集中してしまう為です。

そのため、通常週に2回程度の管理組合との打ち合わせが連休の前後の週は、ほぼ毎日の様に行われます。

今年も今週から来週末にかけて管理組合との打合せが、毎日の様にあります。

土曜日の管理組合との打ち合わせは、ダブルヘッダーも珍しくありません。

これは施工会社が働き方改革で、土曜日はまだしも日曜日の打合せが事実上不可能に近くなっていることも影響しています。(工事期間中の平日に日曜日出勤の代休は取れなくなっているため)

午前中、午後、夕方と恐怖の打合せのトリプルヘッダーとなる年もあります。
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