マンション大規模修繕日記

マンション大規模修繕業務に係わる日記です。

2024年09月

管理組合のトラウマ2

ここ数年建築業界は好景気ですが、その前の建設業界は不況が長く続き、中には倒産してしまう施工会社もありました。

特にリーマンショックの時は、新築工事の工事発注量がぐっと減ってしまった為、背に腹を変えられず、マンション大規模修繕工事に進出する全国規模の中堅ゼネコン(総合建設業)も数多くありました。

そのため、大規模修繕業界はかつてない過当競争となってしまい、工事の受注単価はどんどん落ちて採算割れと思われる工事費で受注せざるを得ないゼネコンが数多くありました。(今の工事単価の半分程度の物件もありました)

このような状況では、利益を確保することができず、残念なことに奮戦むなしく、倒産となってしまう中堅ゼネコンもありました。


倒産してしまった中堅ゼネコンに大規模修繕工事を発注していた管理組合はたまったものではありません。

世間的には、名の知れた中堅ゼネコンのネームバリューを信じて発注したのですから、倒産はまさに青天の霹靂だったと思います。

最悪のケースでは、工事の途中で倒産してしまい、工事の継続ができなくなり途方に暮れる組合、工事が終了していても契約時に約束していたアフターフォローや保証は全てなくなってしまった組合が何件も出ました。

しかし、大規模修繕工事竣工後1年目検査ではどのようなマンションであっても大なり小なり何等かの不具合が出るので、アフターフォローで無償での補修が出来なくなるとその後の建物維持に支障が出ます。本来無償で直してもらえる不良工事個所を泣く泣く自ら持ち出しで補修をせざるを得ませんでした。工事単価があまりに低かったので、不良工事が続発したようです。

大規模修繕工事を請負ったゼネコンが倒産してしまった管理組合の方には、この時の理不尽な試練が大きなトラウマになってしまいます。


次回の大規模修繕工事の時は、「どうしても、今度こそは倒産の心配の無い会社を選ぶこと」が第一の目標となってしまいます。

そのため、見積金額が少々高くても、規模の小さい会社よりは、会社規模が大きくても「経営が安定した施工会社」を選びたいという気持ちが強くなります。


ここで問題になるのが、総会で「規模の小さい会社」より見積金額が高いにも関わらず、大きい会社を選んだ理由の説明です。

規模が小さく、見積金額が安い会社との見積金額の差が大きくなればなるほど難しくなります。


大規模修繕工事に携わる令和の若手建築技術者はどんな企業で働きたいのか?

昭和から平成にかけては、若手の建築技術者は北海道の地場企業で務めるよりも全国に支店のある大企業に勤めることが、給与を含めたあらゆる面で待遇がより良く、そちらを目指すというのが常識でした。

また、どの会社も売り上げ、利益は前年よりも次の年は上がっていく、いや、上げていかねばならない。いわば右肩あがりで運営することが企業として当たり前、いわば右肩あがりが企業として常識でした。そのために必死に頑張ることも当たり前でした。

しかし、令和になるとそんな昭和や平成の常識は一切通用しない状況になっています。

私も昭和から平成に生きた身ですから、ちょっと信じられないことが3年ほど前から起こっています。

令和になると、なんと、大規模修繕工事に携わる令和の若手建築技術者は全国規模の大手の施工会社をどんどん辞めて、地場の中小の施工会社に就職しています。

特定の会社ではなく、多くの全国規模の大手企業でみられる現象の様です。

一人や二人ではなく、全ての会社を合計すると多くの若手建築技術者が大手から中小に転職しています。

あまりに不思議で大手を辞めた理由と中小を選んだ理由を当事者に伺う機会が何度かありましたので、詳しく聞いてみました。

全国規模の大手の施工会社を辞めた理由としては

・冬季間本州の現場に出向がありその間、奥さんのワンオペ育児や介護が避けられない。

・転勤が何年かごとにあり、家族に大きな負担がかかる。

・現場以外の社内的な仕事量が多い

・会社の社風、上下関係が「厳しい」

・年間の売り上げ目標、利益目標が決められていて、それを達成することが最優先課題。

・無理な受注も中には出てくるが、そのしわ寄せ(負担は)現場を預かる若手技術者に

・社内が常にピリピリしていて落ち着かない。

・ピリピリしている上司に相談できない。頼れない。

等でした。

一方の地場の中小の施工会社選んだ理由

・転勤がない

・社風、上下関係は厳しくなく、すべてがいわば「緩い」

・売り上げ、利益を上げるよりも「みんながソコソコ食べていければ良い」という考えで無理な受注はしない。

・社内の雰囲気は「和気あいあい」

・上司に気軽に相談できる。頼ることができる。

・給料を含めた待遇は大手に比べそんなに悪くない。

現在の若手建築技術者は「転勤」「厳しい」「ピリピリ」を嫌い「緩さ」「和気あいあい」「上司に相談」を求めているようです。

そもそも、大規模修繕工事は管理組合からの発注量が年によってマチマチな業務です。

発注量が多い年があれば、一転少ない年もあります。発注量が減った年に一度上がった売り上げを減らせないとなるとかなり無理をして受注することになります。

この状況で売り上げ、利益を常に右肩上がりとする目標を掲げると、現場を任せられた若手技術者には、自分のキャパギリギリの長時間勤務といった様々な負担がかかっています。

さらに言えば、長時間勤務によって夫婦の関係にひびが入り、最悪離婚に至ったケースも少なくありません。奥さんは急な長時間勤務に対してご主人の浮気を疑うようです。

どうやら会社が「売り上げ、利益を常に右肩上がりにする」という目標は若手技術者にとって望ましいものではないようです。

技術者不足のため、会社を移ることが、以前よりも簡単になっています。

若手技術者がいわゆる「地方の中小の会社」から「あらゆる面で恵まれた大手の会社」にどんどん移ると思っていましたが、現実はその真逆で「厳しい大手」から「緩い中小」に移っています。

大切なのは、家族との時間だったり、ワークバランスだったり・・・多少の収入増よりも、和気あいあいの雰囲気の良い環境で、緩く、上司に相談したり、助けてもらいながらソコソコ稼ぐことができればよい。ということのようです。







平日の現場見学会と働き方改革

これまでは現場見学会というと、土曜日の午前中か午後に行うというイメージですが
こちらの現場では、平日の朝10時から行いました。

以前は日曜日に開催ということもありましたが、昨今の「働き方改革の影響」で
休日出勤で行うことが事実上困難となり、日曜日の開催はほぼできなくなりました。

そうなると土曜日に現場見学会となるのですが、施工会社や設計事務所だけではなく
組合の方も忙しくなかなか人が集まらないということもあります。

リタイヤされてから時間がかなり経った方には、昨今建設現場では大問題となり
つつある「働き方改革の影響」といってもピントこないかもしれません。

現実の施工会社への影響としては、残業、休日出勤が月40時間までに厳しく制限されて
しまい、残業すると社内的な問題となってしまい、「いくら社員が働きたくとも働けない」
という一昔前では、考えられない事態となっています。

中にはタイムカードではなく会社のパソコンの稼働時間で労働時間を管理、制限
されている会社もあります。

そのような会社の社員は、こっそり自宅に仕事を持ち帰ってこなすそうです。
これでは「家族にも会社にも言えず、もちろん残業手当も出ない闇残業」となり、
本末転倒というか何のための「働き方改革」なのか?となっています。

しかも、これまで企業によっては上限なく支払われてきた残業手当も月45時間を
超える分は月45時間までと決められていますので、企業は支払うことができずに
自動的にカットされますから、諸物価高騰にも関わらず、実質賃金が目減りして
しまい、特に若手の生活を圧迫することになっています。

これまでは、建築現場は工事のできる春から秋までは日曜日のみを休みをした
4週4休として、現場の無い冬季間に休みをまとめてとることがが一般的でしたが、
「働き方改革」の推進で大手の建設会社から春から秋も4週6休となりつつあり、
最終的には通年での完全週休2日を目ざすとのことです。

このままでは施工会社の土曜日の休みは増える一方ですので、これまで当たり前に開催された
土曜日の現場見学会すらも開催が難しくなりつつあります。

そのような社会変化に対応すべく、今後平日の現場見学会が増えてくるかと思います。

また、同じ理由で土日の理事会、修繕委員会の開催もどんどん難しくなってきます。

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管理組合のトラウマ

いろいろな組合さんと仕事をしておりますが、トラウマのある組合さんも中にはいらっしゃいます。

トラウマのある組合ってどういうこと?とお思いでしょう。

簡単に言えば、信頼し全てをお任せしていた管理会社さんから裏切りにあったと多くの組合員の方が感じていて、全てに対して疑り深くなっている組合さんです。

しかもその裏切りが大規模修繕工事や日常修繕に関わっている場合が少なくありません。

何年か前にお仕事をした管理組合さんは大規模修繕工事の施工会社選定で管理会社さんかかなり強引な手段で施工会社を決められそうになり、組合員が頑張って施工会社決定の総会で否決としたそうです。

また、別の組合さんでは、日常の修繕工事をかなり割高に発注させられた疑惑があるそうです。

このような組合さんは、大規模修繕工事のパートナーとして北星を選んでいただいても、いろいろな場面でかなり慎重というか、疑がり深い傾向があります。

やはり、一度信じていた相手から裏切られたとなると、それがトラウマになってしますべてを疑ってしまうのはどうしても仕方がないことだと思います。

ただ、それがあまりに過剰になって、自分たちで答えを出さない、出せない方向へ、つまり施工会社を自分たちで選べなくなる方向へ行くのは、まずいと感じています。

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