これまでのお話のポイントは管理組合が施工会社に無料で調査と設計までお願いをした場合には、管理組合にその気が無くとも建設業界的には管理組合はその施工会社を発注先として選んだことと同じになることです。

つまり、施工会社はすでに他の施工会社が組合から調査診断から設計まで受注し、「うちの物件」と言われ証拠を示された物件を競争してまで、受注しようとは考えないようです。

それは、それまでコストを掛けて調査、設計を行ったものを横取りすることになり、仁義に反するからです。

調査診断、設計をその会社で行ったということは管理組合が了承していないと出来ないことなので、その証拠として、会社の名前入りの報告書や仕様書を見せられれば、競争を降りざるを得ないのかも知れません。

見積書には施工会社の社名入りの報告書、仕様書を添付し自社が組合から委託されている証拠をアピールするでしょう。もちろん施工会社は工事費に調査費用と設計費をコストオンします。

世の中に只のものはありません。当たり前といえば、当たり前です。

このような事態を防ぐためにはどうすれば良いでしょうか?

このお話の例で言えば、まず設計監理方式を行うことを決める前に相場のリサーチを行い、高めに予算を確保しておくべきでした。

値段の差が少々でしたら「交渉」をおこなうか「予算修正」をすればよかったのです。
調査診断と設計監理を分離発注しても良いでしょう。

調査診断と設計の予算確保のためには、大規模修繕の総予算を考えて(1戸あたり100万円 50戸未満の小規模であれば110万円)その5%程度確保しておくという方法があります。

80戸で8,000万円の工事費でしたら400万円のコンサル費用となりますので400万円の予算を確保しておくという方法です。

でも、工事まで含めたもっと広い視野で調査診断設計監理を考えて進めて欲しいというのが我々の本音です。

電話で相談を頂いた管理組合の工事は規模から推察すると8,000万円ほどかかります。8,000万円の工事に対してたった50万円の増額を渋り、150万円を節約するために悪魔の囁きに耳を貸すところでした。

50万円は工事費の0.6%、150万円は1,9%です。消費税の値上がり額よりはるかに小さい金額のために当初の決めた道を踏み外し「高い買い物」をすることになります。

世の中には「只より高いものは無い」という言葉より、「只よりよいものは無い」という言葉を信ずる「善良な人」がいます。

この「善良な人」にも困りますが、許せないのは、困っている管理組合の「善良な人」を「甘い言葉で誘惑する人」です。

特に「組合のためになるから」「リスクはない」と言い組合に不利益になる方向へ何食わぬ顔で誘導する人。

裏事情を充分知っていて善人の仮面をかぶり「組合に甘い罠を掛ける極悪人」あなたの周りにもいるかも知れません。

くれぐれも甘い言葉にはご注意ください。