先日あるマンションの組合員さんから相談がありました。

築10年目のマンションですが、先月、来年10月の消費税の値上げ前に大規模修繕工事を終わらせ、消費税が8%のまま支払いを済ませることを目的にした工事計画を臨時総会を開き決定したそうです。

幸いにも管理会社さんが全面的に協力してくれ、無償で調査診断、設計、業者選定まで行ってくれたとのこと。

しかし、その後の景気判断で消費税の増額は1年半先送りになったということで、「果たして、大規模修繕工事を急いで実施する必要があるのか?」という疑問が沸いてきたそうです。

というのも、臨時総会議案書には、施工会社名が管理会社の名前になっており、さらに下請けの建設会社の名前が記載されています。工事の内訳書はありますが、他社との見積もり比較はなく、見積もりは1社からしか徴収していません。

調査診断報告や工事の内容説明もなく、建物は、まだキレイな状態なので、疑問に感じ工事を行う理由を管理会社に聞くと「長期修繕計画書に書いてあるから行わねば成らない」とのことです。

「管理会社さんに悪意はなくとも、組合員に説明が無いことや、施工会社選定の経緯が不明確なこと」「そもそも工事急いだ大きな理由自体が無くなってしまったこと」を理由に「工事契約を一時保留にして、再度理事会で問題点を検討することを理事会へご提案してはいかがかですか」とお話しました。

このような状況ですと、ご相談を受けた方以外も同じような疑問を抱えている組合員さんは少なくないでしょうし、「臨時総会で決まったから工事をしないわけにはいかない」という理由で、管理会社さんも工事を急ぎ、理事長さんに契約を迫ることはないと思います。

大規模修繕工事は管理組合が一体となって取り組まねばならない事業です。管理会社さんがリードされることは差し支えないのですが、組合員の多くが納得しないまま進めると、先々でトラブルになります。

予想される最悪の事態は、管理組合の中で、「このように管理組合の弱みに付け込むような、不誠実な管理会社を変えるべきだ」という声が大きくなることです。

どのマンションでも大規模修繕に反対される方はいらっしゃいます。

しかし、そのような方を減らすためにも、工事に先立ち、建物の現状、工事の必要性、工事の内容を組合員に説明すること。施工会社の選定の透明性を確保すること」を行ったのであれば、組合員の理解は得られると思います。