「白紙に戻す」という総理大臣の決定で、やっと決着がついた、新国立競技場の建設ですが、この中で一番焦点となったのが、工事費だったと思います。

当初工事予算が1,300億円であったにもかかわらず、3,000億円になり、設計変更をして1,600億円となり、最終的には、2,520億円で契約・・・といった流れでした。

なぜ、こんなに工事予算がコロコロ変わるのかという疑問が大きいと思います。

設計段階以前のコンペのパースで、工事費は絶対算出できません。

この段階では、どの案も絵に描いた餅です。

それは、仕方がないことだと思います。

しかも、デザインコンペですから、応募する側としては、目を引くデザインとしなくては、選ばれないと考えても不思議はありません。

しかし、ここから先は、選定側の問題があって、予算重視なのか?多少は当初予算をオーバーしても、資金が集められるのか腹をくくっておかないと、デザインは決まったが、予算オーバーで建てられないということになります。

審査委員長を有名建築家にしたということは、「本当にこの予算で、この案を建てることができるのかどうかの目処が立つはず」という目論見もあったと思います。

ところが、現実は、建築家は「デザインを決めることが仕事で、作るのは別問題、まして、お金については責任外」としか思えない対応になってしまいました。

残念なことです。

比べるのもオコガマシイ身近な例ですが、最近の大規模修繕の見積は設計者の予想をはるかに超えています。

設計概算を超えることも珍しくありません。

10前に作成した長期修繕計画上の予算の1.5倍ということもたまにあります。

建設費の高騰だけではなく、当初の工事費の予測が甘かったことも原因です。

ところが、これを正直に言ってしまうと、新国立競技場の場合とは異なり、責任を追及される人が出てくるので・・・困ったものです。