昨日お話した例のように、新築時の問題が明白な場合もあります。

しかし、多くの場合は、大規模修繕時に仮設足場を架け、下地調査をしないと問題が判明しないことがあります。

そのひとつの例が、外壁タイルの異常な浮きです。

このように隠れた問題点は厄介で、調査診断時に局所的に外壁タイルが浮いていても施工制度のばらつきという事象があるので、この部分だけで問題提起できません。

建物全体の下地調査を行って、建物の劣化の全体像が見えてきてはじめて、問題が明らかになります。

特に調査を管理会社等、他社が行って、設計事務所が設計から入る物件では、調査診断報告書の確認調査しか行えないので、問題の発見は遅れてしまいます。

簡易診断のような短期間の調査では、隠れた問題は発見できない可能性が大きいのです。

それは、健康診断の問診だけで、病気がすべてわからないのと一緒です。

病気を発見し、適切に治療するためには、各種の精密検査と治療が必要となります。

ここで言う精密調査とは、建物調査診断ではなく、仮設足場を掛けた建物の全面調査のことです。

もしも、大規模修繕工事の関係者の中に新築時の問題点の隠蔽を考えている人がいれば、仮設足場を掛けた建物の全面調査時に明らかになった調査結果を改ざんすることができます。

組合に対して、問題が無かったかの様に報告し、こっそりと直すか、直した振りをするか、そもそも、気がつかなかった振りをするか・・・

なぜなら、分譲会社にとって、管理組合に対して新築時の問題点を自分から正直に報告することは、組合の皆様が考えているよりも、大変なことです。

解決までの長い、長い道のりが待っています。

時間も掛りますし、補償の打ち合わせも大変です。

これを行うには、担当者、マネージャー、経営者すべてに勇気が必要なことです。

そんなことなら、大規模修繕工事の見積金額を大幅に下げて、利益が出なくとも、大規模修繕工事の受注を・・・

というのは、よくない想像になってしまいます。

管理組合が取れる自己防衛策のひとつとして、建物の状況、工事の状況を正直に伝えてくれる設計事務所と委託契約を結ぶ方法があります。

ただし、委託契約を結ぶ設計事務所が建物の問題点に気がつかないのであれば、意味がありませんが・・・