大規模修繕工事の実施を決める管理組合の総会に出席する事が多いのですが、そこで問題になり、出席した理事、組合員の頭を共に悩ませているのが、大規模修繕工事費の問題です。

その多くが、長期修繕計画書に記載された工事費よりも設計事務所が作成した概算工事費の方がはるかに高くなっていて、積立金が不足するというものです。

なぜ、このような事が起こるのか?

そもそも、長期修繕計画書の工事金額の根拠となる概算工事費は国土交通省の長期修繕計画書ガイドラインの中で工事項目ごとに工事数量×工事単価の総数で算出することになっています。

まず、この工事単価には工事に関わる経費を予め入れておかないと少なくとも経費の分が欠落し長期修繕計画書の工事費が低く算出されます。

又、工事項目を算出するためには、詳細な工事内訳書の作成が必要にとなります。
これは、一般的な大規模修繕工事の場合、工事内訳書だけで20ページほどの書類となります。

これらの書類を作成するには、結構手間が掛かり、その費用はゼロから作成すると30万円以上掛かります。

そのため、大規模修繕工事後に工事の内訳書を基に長期修繕計画書を作る例が多くなります。

しかし、大規模修繕工事を行う前の管理組合の中には、新築時の工事数量、工事項目を基にして長期修繕計画書を作る組合も多いようです。

ある管理会社の方から伺ったのですが、分譲時の長期修繕計画書は新築時の施工会社や設計事務所に作成をお願いしていることが多いとのこと。

そのために、大規模修繕工事に不慣れな人が作ると、新築時には無く、大規模修繕工事で初めて必要となる工事項目が多数あるため、結果として工事項目が少なく工事費が不足する事例が多いとの事です。

これは例えば、バルコニーの床防水、外部梁の上のウレタン防水等がこれに当たります。

確かに今では少なくなりましたが、新築時にバルコニーの床防水がされていなかったり、ごく簡易な防水がされているマンションに遭遇することもあります。

残念ながら、手元の長期修繕計画書の内容、不足項目を確認しようにもほとんどの場合、長期修繕計画書の基礎となる工事の項目、工事の単価が分かる内訳書は手元にありません。

結果として、根拠のない長期修繕計画書になってしまっているケースが多いそうです。

このような理由から新築時の工事数量、工事金額を基にした長期修繕計画書の工事金額が実際の大規模修繕工事の金額よりも低くなっています。