長期修繕計画の見直しを行うと例外なく修繕積立金の値上げとなってしまいます。

中には現状より10,000円近くの値上げとなる組合もあります。

それとは逆に戸当たり3,000円程度値上げで済む組合もあります。

この二つの組合の違いは何かと言えば、過去と現在の積立金額と積立金の残高です。

積立金不足で1回目の大規模修繕工事を3年ほど待った組合は、工事後の積立金残高もほとんどありません。

過去の積立金額を伺うと分譲当初の積立金は驚くほど低くかったです。

長期修繕計画書の見直しをすると積立金の値上げ幅が大きく10,000前後の値上げが必要になります。

一方、分譲当初からそこそこの積立金額を維持している組合は大規模修繕工事が終了しても、

工事に掛かった費用と同じくらい積立金が残っていて、積立金の値上げ幅が3,000円程度に抑えられます。

工事に掛かる費用は、建物規模や形状によって多少の差はありますが、ある程度決まっています。

工事費に2倍の差が付くことは滅多にありませんが、修繕積立金の徴収額が何倍になっている例はザラにあります。

「分譲時の積立金が意図的に安く抑えられている」このことに気が付き、組合員を説得し、竣工後早い時期に積立金を適正額迄値上げすることが出来た組合は積立金が充分に貯まっています。

一方、積立金が低額のまま、疑問に思いながら対策を取らずに過ぎてしまった組合は積立金が大きく不足しています。

前回のような時間軸と積立額のグラフを作れば、一目瞭然なのですが、そうはなっていません。

例えは、悪いかもしれませんが、まるで、イソップ童話のアリとキリギリスの話を彷彿とさせる話です。

過去にお金を多く積立をしたから、今積立金が貯まっている。

当たり前と言えば、当たり前なんです。

この前提をすっかり忘れて、今まで積立金を充分に貯めていない組合に限って「修繕積立金を急にそんなに値上げできない」と強い反対が起きます。

「何とかならないか?」と相談されても、どうにもなりません。

「組合員を納得させてほしい」「説明会を組合員が納得するまで何回も開いてほしい」と言われることもあります。

基本的に契約して頂いた長期修繕計画見直し業務には含まれていない内容です。

組合員の説得は組合内の問題ですから、設計事務所には無理な内容です。